カイト・カフェ

毎朝、苦みのあるコーヒーを・・・

「一杯の口裂け女が溶けると春になる」~学校を脅かすデマの話

◎4年生で総合的な学習の時間に「おそば屋さん」を開くということで、教室がすっかりソバ屋模様になっています。一度見に行ってみて下さい。廊下に突き出た屋根のひさしなど、簡単な細工なのに私なぞには思いつかないなあ、と感心しました。他人の技を盗んで覚えておくのも教員の大事な仕事です。これも記憶に留めておきましょう。

◎ソバ屋で思い出したのですが、昔、一杯のかけそばという物語がありました。国会でも取り上げられて日本中に大ブームを巻き起こし映画まで作られましたが、後に作者が詐欺師で、実話とされたこの話も全くのフィクションであると判明し、日本人全体が「狐が落ちた」ようになってしまった事件です。

 あらすじを言いますと、
 ある蕎麦屋に、大晦日のそれも店を閉めようとしている矢先、お母さんと二人の息子が「かけ蕎麦を下さい」と店にきます。お金がないからといって一杯のかけ蕎麦を3人で分け、黙って出て行きます。翌年もまた同じことが繰り返され、それが数年続きます。そして突然、途絶えます。それから何年もたったある日、その親子がお礼に現れ『おかげさまで、息子が医者になりました・・・」と、そんな話です。
 私がこの話を最初に読んだときまず思ったのは蕎麦屋に行って一杯のかけそばを食べるより、蕎麦を買ってきてウチでゆでれば軽く3人前はできるだろう」ということです。わざわざ大晦日蕎麦屋の閉店時刻を遅らせてまでやることではないだろうに・・・・。

 この手のデマとなると特に有名なのは口裂け女と「なんちゃっておじさん」ということになりますが、これらの話に共通なのは、細部はやたら詳しい(口裂け女は100mを8秒6で走る。小学校3年生の娘がいて名前を○○というなど)のに本質的な問題、例えば「誰がいつどこで目撃したの? 」「誰に聞けばきちんと答えてくれるの?」といったことは全くあいまいな点です。

「雪が解けると春になる」という話もありました。
 普通学級と特殊学級に通う双子の姉妹がいて、普通学級に通う子は「雪が解けると水になる」と答えて○をもらい、特殊学級に通う子は「雪が解けると春になる」と答えて×をもらった・・・という話で、日本の教育の硬直性、教員の無理解を強く印象付ける話として広がりました。中には本気で怒った人も数多くいたのです。しかしこの話、「普通学級と特殊学級に通う双子の姉妹がいて」と言った時点ですでに悪意ある作り話と知れます。

 最近のヨタ話としてつとに有名なのは、「日本の教員は平等を大切にするあまり、運動会のかけっこでも速く走った子もゴール前で待っていて、全員で手を繋いでゴールする」というものです。あちこちで面白おかしく取り上げられますが、どこのなんという学校で行われたか、誰が取材し、どの記事を見れば元ネタが分かるのか、それについてはだれも知りません。