「教職員給与下げ要請  財政審「一般行政職より高い」反発は必死」

 

 金曜日のS新聞に上のような見出しの記事が出ていました。それによると、義務教育特別手当や教職調整手当のために義務教育職員の給与が一般職より11.4%ほど高くなっており、これが年金に反映するため、年金額の方も2万円ほど多くなってしまっている。「教職員をあまりにも優遇しすぎた。この制度は現実離れし、既得権益になっている」(N分科会長)ということです。

 

 教職調整手当というのは教職の特殊性を考え、適正な超過勤務手当が計算できないので、ということで一律に与えられる残業手当代わりのもので、本給の4%ということになっています。残業をしてもまったくしなくても4%というので、世間からはめっぽう悪く言われています。しかし超過勤務をまったくしないという教職員がどれほどいるのでしょう? 保育園にお迎えに行かなければならない母親先生はしばしば退勤時刻きっかりに学校を出ますが、それとて大量の仕事を持ちかえっていますから同じです。

 

 仮に(そんなことはないのですが)帰宅時刻の平均が午後7時だとすると毎日2時間の超過勤務、月40時間余の残業ということになります。本給を30万円と考えればその4%は12000円、40時間で割れば時給300円ということになります。本校の先生方のように月100時間(毎日9時まで仕事をやって、日曜日の作業に出たりすると、これくらいになります)もの超過勤務をするとなると、12000円÷100時間=120円(/時間)。日本のどこの世界に、時給120円で働いている人間がいるでしょう?

 

 私の弟は市役所勤めですが、残業手当は時給2,114円です。もっとも公務員は労働基準法に直接縛られず、超過勤務手当も予算の割り振りで行いますから、「計算の半分くらいしか出ない」と言っています。それでも100時間の超過勤務には10万円ほどの手当てが出る計算になります。

 

 義務教職員等特別手当は4%〜6%となっていますが、実際には3.7%ほど(どうしてだ?)で、一口に言って1万円強といったところでしょう。調整手当と合わせて2万円〜2万5000円の権益を捨てて10万円の超過勤務手当をもらうのも悪い話ではありません

 

 むしろ問題なのは、N分科会長が別のところで言っている「もはや教員だからといって優遇されるべき時代は終わった」というその考え方自体です。なぜなら、人材確保と学校教育水準の維持を目的に施行された人材確保法を廃するということは、教員はさして優秀な人間でなくてもいい、学校の教育水準が下がってもいい、ということに他ならないからです。

 

 アメリカでは初等教育における女性教員の割合が95%を超えていますが、それは安い給与の見返りに4時には帰宅して家事ができるというメリットがあるからです。教職はもはや男子一生の仕事ではないとみなされています。アメリカは(イギリスも)教員給与の安さが、初等教育を潰してしまいました。そうして国民教育に見切りをつけても、しかしアメリカは困りません。高等教育おいて産学共同体を編成し、世界中から優秀な人材を集めてその力で経済発展を果たすという独自の道を歩んでいるからです。現在、アメリカの研究を支えているのは、主としてインド人、中国人、そして世界各国から集められた優秀な研究者たちです。

 

 日本も1千700万人に及ぶ普通の日本人の児童・生徒に金をつぎ込むより、数百人のエリート学生・研究者に金をつぎ込んだ方が絶対に割安です。そのエリートが日本人である必要もありません。東大・京大に優秀なインド人や中国人・韓国人を引き寄せ、その研究成果を掠め取れば今以上の経済発展は十分望めるはずです。日本もそういう国になっていくのかもしれませんし、いまこそその転換点なのかもしれません。

 

 教員を普通の、あるいはそれ以下の職業にしてしまう。その上で多くを望まない、それはそれでひとつの選択のしかたです。