カイト・カフェ

毎朝、苦みのあるコーヒーを・・・

「自信をもって頑張ろう!」~日本の公教育は、金も人も足りないところで世界レベルを維持している

 7月4日づけ朝日新聞に「義務教育世界一のカギは学校の裁量 フィンランド教育相」という記事が載っていました。

 経済協力開発機構OECD)の国際的な学習到達度調査(PISA)で読解力トップなどの成績をあげたフィンランドから、トゥーラ・ハータイネン教育相(45)が来日し、先月22日、日本記者クラブで会見した。「教育の平等を保障し、教員の質を高め、学校の裁量を大きくしている」と「義務教育世界一」のカギを語った。
ということで、

  1. 教育相が繰り返し言及したのは、学校の裁量の大きさ。国はカリキュラムの大枠を決め、後は学校に任せていると述べた。視学官の査察はやめ、学校が自己評価している。
  2. 教員の質も高く、教師になるには修士号の取得が条件だと語った。
  3. 「能力別クラスをとらないなどの路線の正しさがPISAで確認された」と教育相。

といった内容が書かれていました。

 フィンランドの教育についてフィンランドの教育相が言っているのだから間違いないだろう、というのは間違いです。人間は、しばしば自己認識を誤ります。
 生徒数50人以下の学校が40%にものぼり、生徒数500人以上の学校はわずか3%
というフィンランド、しかもその小さな学校に、校長、教員、専門科目教員の他に、看護士、学校心理学士、特殊教員(授業中の生徒を観察し、教員に助言したり、自分が別個に授業についていけない生徒やグループの面倒をみる)、学校アシスタント(生徒数が大きい学級にアシスタントを入れる)など、大量の職員を入れているのです。

 それを支える予算は実にGDPの5.7%。日本のそれ(3.5%)よりはるかに多いのです(その差2.2%は日本のGDPで計算すると約11兆円。日本の国家予算約80兆円から考えると、とんでもない金額を教育にかけているかがわかります)。これだけの差を横において、やれ教員が大学院卒だ、自由裁量だといっても始まらないでしょう。

 また、(これはどこのマスコミにもほとんど載らないことですが)フィンランドの小学校には就学猶予の制度があり、きちんと座っていられない子、話を聞けない子などは、特別の幼稚園で一年間教育を受け、学校の授業が受けられるようになってから一年遅れで小学校に上がってくるのです。それに引き換え日本は、7歳になる児童は全て受け入れ、その上でアメリカのような留年制度や退学制度もない極めて稀な教育を行っているのです。大変なのはあたりまえでしょう。

 日本は政府が世界一教育に金をかけず、子どもも世界一家庭学習をしない国です。それでもなお世界トップクラスの成績を(かろうじて?)維持している・・・。

 先生方! 自信をもって頑張りましょう!