カイト・カフェ

毎朝、苦みのあるコーヒーを・・・

「教員が、ものさしを持ち出して髪の長さを調べる日が来る」~東京都議会ツーブロック問題① 

 都立高校の多くで禁止されている髪型「ツーブロック
 細かな差異を無視して一括で校則違反とするには理由がある。
 しかしそれでもツーブロックを違反にすべきでないというなら、
 議会が決めて責任を取ればいいのだ。

というお話。

f:id:kite-cafe:20200720061938j:plain(「えんじ色シャツ髭の外国人男性7」 フォトAC より)

 

【聖・池川議員の不信】

 先週の「キース・アウト」で扱ったBazzFeedの記事『事件に遭うからツーブロック禁止? 都立高校の校則に「意味不明」「データはあるのか」と批判殺到』はさまざまな意味で興味深いものでした。

 都立高校において
 なぜ、ツーブロックはだめなんでしょうか。
と質問した東京都の池川議員、
 その論点は以下のように、まとめられます。

  1. ツーブロックと言ってもかなり広い定義の髪型なのに、なぜ全体として禁止してしまうのか。
  2. 大人の世界ではスタンダードである髪型なのになぜ禁止されるのか。
  3. 校則を決めるときに、生徒の声がほぼ聞かれていない。会社であればその過程でいろいろな意見を聞くのに、学校では校長が一方的に校則を押し付けている。

 そして最終的な主張は、
「校則は大人によって変わるものでなく、子どもたちの意見を聞いて変わっていくものだと伝えること」
ということのようです。

 そのひとつひとつに反論するのもバカげていますが、考えてみれば池川議員の疑問は平凡と言っていいくらいよく聞かされるものです。もう何十年も前から尋ねられ、何十年も前から繰り返し答えられたものなのにいまだに言われているのは、やはり学校の広報が不十分だということなのでしょう。教育長のような立場ある人が強く言ってくれればいいのですが、それが無理なら下々で対処するしかありません。繰り返し、訴えてくだけです。

 

【なぜきめの細かなことをせずに一括で対処してしまうのか】

 ツーブロックと言ってもかなり広い定義の髪型なのに、なぜ全体として禁止してしまうのか。
――その答えは、一言でいって「面倒でバカげているから」です。

 ツーブロックは池川議員のおっしゃる通り「広い定義の髪型」で、一方の極みが「人を威嚇するような『ほとんどモヒカンのツーブロック』」なら、反対側の極みは「『それでもツーブロックのつもりなの?』と言っていいほど『地味なツーブロック』」です。
 いかに池川先生と言えど「ほとんどモヒカンのツーブロック」まで許可せよとは言わないでしょう。都立高校が片端いま再び評判のテレビドラマ、「今日から俺は!」の私立軟葉高校みたいになるのは困るはずだと思うのです。
(もし、髪型は表現の自由だから一切規制してはならないというお考えなら、これからお話ししようとしている局面と別のものですから、場を改めましょう)

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 そこで「ほとんどモヒカンのツーブロック」を抑制して、なおかつ「全体として禁止しない」ことを考えると問題になるのは、どこにボーダーラインを引くかということです。そこで機能するのは数値だけでしょう。
 したがって「ほとんどモヒカン」を排除する校則は例えば次のようになります。
ツーブロックの場合、借り上げ部分は耳の上部から4cm以内として、頭頂部の髪の長さは5cmまで、しかも逆立てない」
 これで池川議員は満足でしょうか?

 翌日から学校職員は物差しを持ち出して、校門前で頭髪検査をせざるを得なくなります。それまでは見た目で“段差”があれば「ツーブロック、即違反、家に帰ってやり直し」で済んでいたものがミリ単位の抗争となるのです。
 「逆立てない」に至っては主観の問題ですからさらに厄介で、あちこちで「逆立っている」「いやこんなのは逆立ってない」紛争が巻き起こります。
 
 教員はそんなことは面倒でやりたくないのです。
 できればさっさと教室に入れて授業をしたい――しかしだからと言って「ほとんどモヒカン」を見逃して学校内を彼らが跋扈し、休み時間に下級生を、放課後に他校生を脅す事態は、それはそれで面倒です。

 必ずしもそうなるとは限らない――、そうお思いですか?
 では試してみましょうか?

 学校としては元に戻すのが大変ですから試すことさえ嫌なのですが、議員が議会で決めてその責任も取ろう(原状回復のために必要な十分な数の教員を追加配当するなど)というならやってくださっても構いません。教員が毎日ものさしを振り回して刈り上げ部分を計っていると揶揄されたら、議会が決めたことだからと庇ってあげてください。それが責任ある態度というものでしょう。

 

 【繰り返されてきた過去】

 私たちは過去に多くの愚かな失敗をしてきました。例えば「スカートは膝上3cmまで」といった校則です。そんなものをつくったばかりに教員は女生徒一人ひとりの膝にものさしを当てなくてはならなくなりました。
 世間からバカにされるだけでなく、今ならセクハラです。

 世間の流行に合わせて女の子たちのスカート丈が短くなっていったとき、学校は腹をくくるべきだったのです。その短すぎるスカートのために女生徒が性被害に遭っても家庭の問題として学校は一切責任を負わないと突っ撥ねるか、ものさしなど持ち出さずともすぐわかる「スカートは膝上まで。それ以上長くても短くても不可」みたいな融通の利かない一括規制にするか、二つにひとつしかなかったものを、安易に妥協したばかりに大変な目にあいました。
 もうそんなことは繰り返してはなりません。一括で「ツーブロックはダメ」でいくか、そもそも髪型の指導を諦めるかです。
 前者だったら学校も守らせる努力をしましょう。後者の場合は議会が責任を負ってください。

(この稿、続く)

 

「新規陽性者286人は怖くない」~東京都の新型コロナ新規感染者数の出入りが大きすぎる件について④

 新型コロナについては昨日で一応切り上げるつもりだったが、
 昨日の発表が286名という飛び抜けて大きな数字だったので、
 かえってうれしくなってもう一日扱うことにした。
 この値の大きさは、むしろ私の推論を補強するものだ。

というお話。

f:id:kite-cafe:20200717075312j:plain(「東京都庁の展望台から見える東京の街並み」 フォトAC より)

【昨日の286人の大部分は、3日前の検査結果らしい】

 昨日の新規陽性者は286名。これは東京都の新記録ということになります。これまでの記録が7月10日の243名ですから2割近くも増えてしまったことになります。

 ただし昨日の新規陽性者数が280を越えるという情報はお昼前に小池知事の口から漏らされており、これで昨日の陽性者の大部分は一昨日以前に検査を受けた人であることが分かります。

 東京都の新型コロナウイルス感染症対策サイトを見に行くと、13日(月)の検査実施数が4585件とこれまでの最高、14日(火)が3289件で4番目の値でした。それなのにニュースで扱われた13日14日の新規陽性者数はそれぞれ119人、143人で少なすぎるのです。翌15日(水)の新規陽性者数も165人と先週末の4日連続の200人台に比べたらずっと落ち着いた感じです。

 これは昨日もお話しした通り時間差が生み出す錯誤で、東京都が発表してニュース番組が扱う数値は報告された数(しかも前日までに)であり、実際の検査日とはずれているのです。小池知事も「検査数が4500人を越えてだいぶ増えていますのでこの結果になりました」といった言い方をしていましたが、昨日の286人の大部分は月曜日の大量検査の結果なのです。
 
 

【緊急事態宣言の4月とは状況がまったく違う】

 ところでPCR検査というと、ついつい私たちは3月~4月段階の記憶に縛られてしまいます。
 あのころは検査体制が十分ではなく(ホントかな?)、「熱や咳があっても4日間は自宅で我慢してそれでも治らなかったら相談センターに連絡の上、病院に行きましょう」と言われた時代です。無症状の人と軽症者はPCRなんか受けていません。

 また、感染者数の最も多かった4月中旬には1日1500件の検査が行われていましたが、そのうちのかなりの部分は感染者自身が複数回やった結果です。最低でも入院時に1回、二日続きで陰性にならないと退院できないのでその際に最低二回、都合ひとりで3回分も消費しているのです。それに家族などの濃厚接触者の検査をしてしまうと“熱があるから検査をしてください”と希望する人に回せる検査は極端に少なくなっていたのです。

 ちなみにそのころの陽性率は最高値でなんと31.7%(4月11日の結果。現在は6.0%)。検査しなくても陽性だと分かるような人ばかりが受けていたからでしょう。
 濃厚接触者ではなく周囲に感染の噂もない人で、少し咳が出る程度の人は検査を受けていません。
 おかげで第一波が落ち着き始めると、検査能力はあるのにその半分も使われていないという状況が生まれ、しばらく長く続きました。余力を残すのはもったいない気もしますが、当時の規定では対象者がいなかったのです。

 それが現在は1日の検査数4500件超。
 陽性者が連日200人越えという意味では4月中旬とほぼ同じ状況なのに、3倍もの検査が行われている――いつのまにか検査能力ではなく、検査実績自体が巨大になっていたのです。どこかの時点でルールが変更になったのでしょう。
 ではいったいだれが検査を受けているのでしょう?
 
 

【現在、全体像を掘り起し中】

 ひとつは3~4月だったら検査を待たされた人の中で、3日以内に症状が消えて結局病院に行かなかった人たちです。現在は4日を待たずして検査が受けられます。濃厚接触者の幅も、少しは甘くなっているかもしれません。

 しかし4500件の大部分を支えているのは、おそらく新型コロナのハイリスク地帯で生活する、無症状の若者たちです。新宿や池袋ではホストクラブやキャバクラの従業員に積極的に声がかけられていますし、特に新宿区では区民であれば陽性の場合に10万円の見舞金が出ますから、不安な人々はどんどん検査に訪れてきます。これによって無症状の感染者が次々と掘り起こされて陽性者となっているのです。

 第一波のころPCR検査の少なさに怯えた一部の人たちは、実際の感染者は報告の100倍はいるだろう、1000倍はいるだろうと言っていましたが、そこまでは多くありませんでした。
 6月中旬に発表された東京都の新型ウィルス抗体陽性率は0.10%。東京都の人口はおよそ930万人ですから計算上は9300人が抗体を持っていた――つまり新型コロナウイルスに罹患経験があったと考えられます。当時の実際の感染者は5500人ほどですからその差の3800人が見逃された数です。
 あのころ見過ごされたのと同じ状況の人たちが、いまは掘り起こされつつあるのです。

 新宿界隈は一説によれば陽性率40%(NHKニュースでは31%)。ですから検査をすればしただけ、入れ食い状態で感染者が出て来ます。それによって東京都全体の陽性率も上がりますが、だからと言って4月当初のような危険な状態があるわけではありません。
 理屈上は無症状の感染者を掘りつくせば、コロナ感染の全体像も見えて感染拡大は治まるはずです。実際にはそこまでうまくいかないにしても、しばらくうろたえることなく様子を見ていましょう。
(東京都の異常な上昇には怯えなくてもいいですが、全国的に増加傾向にあることについてはやはり注意が必要でしょう。それでも私たちはきっとうまくできると思いますが)

 しかしそれにしても小池知事、もう少し上手な説明はできないものでしょうか? メルクマールなんて分からないことを言っていないで。

(この稿、終了)
 

「もっと丁寧な説明はできないものか」~東京都の新型コロナ新規感染者数の出入りが大きすぎる件③

 グラフ上はどう見ても第二波なのに、なぜ政府も東京都も、
 かくも落ち着いていられるのか。
 そうした疑問から始まって、できるだけ都に有利な解釈をしようと努めてきたのに、
 4段階ある警戒のレベルのうち最も深刻な表現に引き上げだとか。
 なんだかハシゴを外されたみたいな気持ちになるが、もう少し考えてみよう。
 それにしても政府も都も、もっと丁寧な説明はできないものか。

というお話。

f:id:kite-cafe:20200716070236j:plain(「【東京都】東京都庁展望台からの夜景」 フォトAC より)

 

【陽性率50%超の世界】

 昨日カーラジオでテレビの音声を聞いていたら、新型コロナウィルスに感染したというホストの電話インタビューが流れてきました。店の従業員55名でPCR検査を受けたところ28人が陽性で、全員無症状だったと言います。

 驚いたことは三つです。
 一つ目はホストクラブが店ごと受けたいと言えば、PCR検査を簡単に受けさせてもらえること。
 二つ目はその陽性率の高さ(50.1%)。
 三つ目はこの件がクラスターとしてニュースにならなかったこと。
 しかしそれが実状です。

 昨日のネットニュースにはさらにこんな記事もありました。
 新宿区が区医師会と協力して行うPCRセンターの検査結果を示す「実績報告」。5月の連休前、検査数は54~62件程度で、陽性率は2.0~8.2%で推移していたが、その後の陽性率は跳ね上がる。6月30日~7月3日の期間は検査数92~140件で、陽性率は29.2~37.3%と文字通りの桁違いだ。(2020.07.14アエラ・ドット『新宿区PCRセンターで「陽性率4割」の衝撃結果…桁違いの跳ね上がりに「感染拡大は明らか」と医師』

 記事と同じ6月30日~7月3日の期間、東京都全体の陽性率は3.5~4.5%でした。つまり新宿区には10倍近い感染者がいたことになります。
 新宿はいままさに新型コロナのホットスポットなのです。
 
 

【そうだ、歌舞伎町に行こう!】

  下のグラフは昨日紹介した東京都の「確定日別による陽性者数の推移」です。PCR検査の結果を報告日ではなく、確定した日で修正したものになります。

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 このグラフについて、昨日は「検査機関が休みだったり職員の数が減ったりする土日は検査数も少なく、したがって陽性者も減る」と申し上げました。しかし7月5日の週に限って言えば、4日(土)~5日(日)の陽性者は多少減っているものの6日(月)~7日(火)も週日なのに同じ程度に少なく、8日(水)にいきなり前日の3倍近い250名が記録されて三日間高止まりしたかと思ったら、12日(日)には再び大きく下がるという不思議な動きをしています。この間土日(11日・12日)以外のPCR検査数は3500件前後であまり変化はありません。

 このことから今回は市中感染がじわじわと広がって感染者数が増えたのではなく、6日~7日は比較的危険とみなされない地域の検体が多く寄せられ、8日以降歌舞伎町のようなハイリスク地帯の検体が寄せられたことがうかがわれます。そう考えないとこんな極端な変化は説明できません。誰かが、
「そうだ歌舞伎町へ行こう!」
と叫んだのです。

 

【まだ制御できる】

 東京都が新型コロナ感染について、4段階ある警戒のレベルのうち最も深刻な段階に引き上げた昨日、官邸では菅官房長官が記者会見で「市中感染が大幅に広がっている状況にはない」と表明したうえで、感染経路不明の割合が一定程度あり、中高年の感染者は増えつつあるから警戒を強化するという考えを示しています。

 感染者数のグラフでは第一波を上回る第二波が来ているように見えるにもかかわらず、政府が頑として深刻さを認めない背景には、経済活動を止めたくないという強い願いがあるとともに、危険は夜の歓楽街を中心とする特定の場所に集中しており、そこを制御していけばまだ何とかなると信じているのではないかと思うのです。

 感染者が出れば真っ先に濃厚接触者として家族が検査対象となりますが、考えてみれば家族は必ずしも濃厚接触者ではありません。老夫婦二人の私の家などはほとんど会話がありませんし、食事も向かい合わせではなく、横並びでテレビを見ながらですから唾液飛沫はかかりようがない。ドアノブや共用のタオルなどは心配ですが、それとて帰宅後すぐに手洗いすれば防げることです。

 それに比べたら(行ったことはないのですが)キャバクラやホストクラブの客と従業員の顔の近さ、声の張り上げ方はハンパではないでしょう。
 小劇場の、舞台の上の役者の口から吐き出される唾のしぶきは、スポットライトでチンダル現象を起こすくらい凄まじいことがあり、私などは若いころ、あれが嫌なばかりに最前列を避けたくらいです(あと、床に転がった刀を役者が蹴って、私のところに飛んできたことがあった)。新宿の劇場で全公演の観客に感染者が出た背景には、そうした部分への配慮のなさがあったのでしょう。
 パーティー、コンパ、会社の飲み会、それらにもいまいちど注意が必要です。
 しかしそれらは今からでもなんとかなる――政府はそう考えているのかもしれません。

 

【説明が雑すぎる】

 まだ2回目の緊急事態宣言を出す時期ではない。劇場やスポーツ施設の観客制限も緩和する、GoToキャンペーンも予定通り実施する――。
 私はそれでいいと思います。

 アテがはずれて急速な感染拡大が始まったら慌てて、
「申し訳ない、やっぱ緊急事態宣言を出します」
と言えば国民はブーブー言いながらも従ってくれます。前回上手くいったように次回もうまくできるはずです。
 しかしそれにしても、もう少し丁寧な説明はできないものなのでしょうか?

 感染者の報告数が8日の75人から8日の224人に一気に増えたとき、「それは検査数が増えたからです」と言った小池知事。それではあまりにも雑すぎませんか?
「224人の大部分は昨日の検査結果ですが、東京都は昨日から歓楽街を中心に積極的、集中的に検査を行っています。これらの地域では陽性率が40%以上にもなる場合があり、したがって感染者数も一気に増えますが、感染が広がっているというより感染を捕えているという状況です。だからあまり大きく心配されないようにお願いします」
 そんな言い方をしてくれれば(それが本当かどうかわかりませんが)、私たちももっと信頼を寄せ、いっそう協力できたはずです。

 菅官房長官も「市中感染が大幅に広がっている状況にはない」と一蹴するのではなく、その根拠を示して私たちを安心させるくらいのことはしてもいいじゃないですか。
 それとも、政府はやっているのにメディアがその部分をカットしているのでしょうか?

 いずれにしろ今回のコロナ禍で一貫して感じるのは、政治家たちのあまりの言葉の少なさです。日ごろはあんなにしゃべるのに――。


* 以上、忖度に忖度を重ねて第2波を認めたくない、緊急事態宣言を回避したい政府、東京都の思いに沿った推論をしてきたというのに、昨夜見たニュースで東京都の委員は、「既に歌舞伎町・池袋といった段階ではなく、中の・世田谷に広がって、陽性者は都内全域にいる」「感染経路も当初、接客を伴う飲食店が多かったが、現在は家庭・職場・劇場・会食場など多岐に広がっている」「既に第2波到来と言ってもいいのかもしれない」みたいな発言をしていて、私はがっかりです。
 それでは普通に考えた答えと同じじゃないですか。
 腹が立って、いったん予約で投稿した記事を全文削除しようかとも思ったのですが、まあ、2時間以上もかけて書いた文です。このままにしておきましょう。

(参考)
2020.07.15 東京都の新規感染者数

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「感染者グラフの不思議なリズムと乱れ」~東京都の新型コロナ新規感染者数の出入りが大きすぎる件について② 

 新型コロナウィルス新規感染者数の推移を表すグラフには
 不思議なリズムと乱れがある。
 それは何に由来するのか、
 真実はどこに現れるのか?

というお話。

f:id:kite-cafe:20200715064859j:plain(2020.07.14 SuperT自作)

【感染者グラフの不思議なリズム】

 上のグラフは私が2月からずっとつけてきた東京都の新規感染者数のグラフです。昨日は143名とまた少し増えました。
 毎日ニュースで紹介されるのと同じ数値で、4月ごろは前日の分が昼頃に発表されていましたが、徐々に早まるようになって最近は当日の午後3時ごろには発表されるようになっています。

 見ればわかる通り、グラフにはほぼ週ごとのリズムがあって、月曜日に大きく下がり火曜、水曜、木曜と増えて行って、土曜日が一番多く、日曜日に減って月曜日にさらに落とすというのが基本的な形でした。しかし絶対的な法則ではなく、週の最大値が金曜日であることも、最低値が日曜日、火曜日、時には水曜日ということもありました。
 なぜそんなふうになるのか――。

 答えは簡単で、土日は検査機関の一部が休みだったり担当者が何人か休んだりして、全体の検査数が大きく落ち込んだからです。

 もちろんそれだけだとさらに正確なリズムになるはずですが、そうならないのは検査機関が結果をまとめて報告するのに(あるいは報告を受けた側が取りまとめるのに)、時間差が生れるからです。
「まだ結果の出ていない検体もあるけど、とりあえずわかった分だけ報告しておこう」
 そういったことをすると1日分が二日に分けて出てくることになります。

 もし、検査結果を報告日ではなく、検査が実際に行われた日で整理し直すことができたら、もっとリズミカルなグラフになるかもしれません。そう思って調べると、実は東京都のウェブサイトにはそれがあったのです。

 

 【休日がグラフに反映する】

 下は東京都のウェブサイト「都内の最新感染動向」から借りてきた「確定日(検査が実際に行われ確定した日)別による陽性者数の推移」のグラフです。これを同じページにある「検査実施数」のグラフと並べてみると、グラフのへこみの部分がほぼ一致します。やはり検査数の少ない土日は陽性者の数も減る傾向にあり、同じリズムで次第に増えて行っているのです。

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 しかし思ったほどはリズミカルではありません。さらにそれどころか、並べてみることでむしろ“分からないこと”“驚かされること”は増えてしまいます。

 極めつけは7月8日(水)の確定日別陽性者250名で、前日の96名から一気に2.6倍も増えてとんでもないことになっている様子はグラフで一目瞭然です。しかしその日は同時に、テレビニュースで「陽性者75名」と発表され、増加が押さえられたかもしれないと皆で胸をなでおろした日でもあるのです(最初のグラフ参照)。
 いったい何後起こっていたのでしょう?
 
 

【新たな感染者が増えたのは、検査数が増えたからばかりではない】

 小池知事は「新たな感染者が増えたのは検査数が増えたからだ」といった説明をしていますが、それで75名が一気に250名に増えた7月8日を説明することはできません。検査数は2.6倍にもなっていないからです。
 大まかな流れとしても、確かに検査数は6月20日前後の1500弱から7月5日の週には3500件前後と2倍以上に増えていますが、陽性者の数は2倍どころではないのです。

 (陽性者)÷(検査数)は「陽性率」として表されますが東京都のサイトで確認すると、陽性率も明らかに増えています。つまり単に検査数を増やしたから陽性者が増えたわけではないのです。

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【市中感染が広がっている――からではない可能性】

 ではなぜ陽性者は増えたのか、陽性率はこんなに高くなったのか――。
 だれでも考えつくのは、実際の市中感染が広がっている可能性です。もちろんそれもあります。しかしそれでも突然の2.6倍を説明することは難しいでしょう。 そうなるとさらに別の可能性を考えるしかありません。
 そこで思いついたのが、検査の対象者を感染の可能性の低い者からより高い者へと移した、あるいは拡大した可能性です。

 今も感染者ゼロの岩手県PCR検査をしてから東京の歌舞伎町に移ってそこで同じように検査をする、そして検査対象を示さずに数値を発表すれば感染者は爆発的に増えたように見えるはずです。あるいは群馬・栃木・茨城3県の検査を関東全体に広げて、埼玉・千葉・東京・神奈川を含めればそれでも陽性率は一気に上がります。

 7月8日の2.6倍にはその可能性はないのでしょうか? そして9日から連続4日間の200人越えにも、同じような意味はないのでしょうか?
 検討してみましょう。

(この稿、続く)

「グラフは簡単に動かない」~東京都の新型コロナ新規感染者数の出入りが大きすぎる件について①

 東京都の新型コロナウィルス新規感染者が、200人台から一気に119人に減った。
 このまま下がっていくといいのだが――、
 しかしそれにしても、なぜこんなに激しく人数が変わるのだろう?

というお話。

f:id:kite-cafe:20200714072136j:plain(SuperT自作)

 

【東京の新規感染者、大幅に増え、大幅に減る!】

 昨日の東京都の新型コロナ新規感染者数が4日ぶりに200人を切って119人だそうです。救急の電話番号(119)と一緒というのは何かスッキリしませんが、一昨日の206人から一気に半分近くまで下がったのですから何かほっとします。

 6月24日(水)に50人を越えて翌日にはいったん40人台(48人)に下がったものの26日(金)からは連続6日間の50人越えで“いやあな感じ”がしていたら、7月2日(木)に前日の67人からいきなり倍近い107人になり、100人台が6日続いて8日(水)にいったん75人に下がって、“やれやれ”と思っていたら9日(木)はまたまたいきなりの224人、一気に3倍近くにもなってしまったのです。
 それから連続4日間の200人台で、もうこれはダメかなと諦めかけたら昨日の119人です。このまま新規感染者数の数が減って行ってくれればいいのですが――と、そんなふうに書きながら、ふと脳裏をよぎるものがあります。

「なんかこれ、変じゃね?」

 

【グラフは簡単には動かない】

 統計グラフというのは基本的に緩やかな流れになるものです。新型コロナ感染についていえば、東京都民が毎日同じように生活し検査が同じように行われているとしたら、増えるにしても減るにしてもそれほど極端になるはずがありません。
 大きなクラスターが見つかってそこから10人~20人と芋ずる式に新規感染者がみつかったといったことはあるにしても、100人がいきなり200人になったり逆に半分に下がったりといったことがあるはずがないのです。
 しかし現実にはそうなっている。だとしたらそこには何か特別な理由があるはずです。

 これについてはこのブログでも扱ったいくつかの例があって、代表的なものは「いじめ件数の推移」のグラフです。(下図)

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 なぜこんなリズミカルなグラフになるかというと、1994年、2006年、2012年にそれぞれ「いじめの定義」が変わって、より広く網をかけるようになったからです。増やす方向でつくった新しい定義に従って報告すると件数は増えざるを得ません。

 いったん大幅に数を増やした後で、新しい指針によって指導が進むと、毎年少しずつ解決していくので数が減っていきます。するとまた基準が変わって報告が増える、その繰り返しが上のグラフです。

 

【警察力は衰えていない】

 もう一つ、基準が変わることで大きな変化を起こした有名なグラフに、警察の「検挙率」というものがあります。

f:id:kite-cafe:20200714072400j:plain これは警察の捜査能力が低下した証拠として利用されることが多いのですが、それにしても異常な低下です。1980年代まで60%前後、時には70%もあった検挙率が一時は20%にも下がったのですから。
――しかしこれにも理由はあるのです。

 1980年代半ばに至って、人口の増加、犯罪増加に警察の能力が追いつかなくなってきたのです。犯罪の増加に合わせて警察官を無限に増やしていくわけにもいきませんし、行政改革でむしろ減らす方向に進んでいました。
 そこで警察は思い切って、“自転車盗のような軽微な犯罪については受け付けこそするが本格的な捜査はしない”という方向に舵を切ったのです。その代わり殺人事件のような重大犯罪には人数をかけて決して容赦はしないと――。

 それは正しい方向だったと思います。
 人数も予算も増やさずに検挙率だけは維持せよ、むしろ上げよと言われたら、殺人事件に100人も200人も投入し続けることができなくなります。殺人事件1件を検挙しようとしている間に自転車盗100件を見逃してしまったら、検挙率はどんどん下がってしまうからです。逆に言えば1980年代までの高い検挙率は、軽微な犯罪に人数をかけていたからこそ達成できたものかもしれません。

 これほど犯罪の少ない日本で、なぜか自転車と傘だけはしょっちゅう盗まれて戻って来ません。まるでこの二つだけは“盗んでいいもの”と相場が決まっているみたいですが、だからと言って今の日本が極度に治安の悪い国という気がしないのは、やはり警察が責任をもって凶悪犯を捕えようとしてくれているからでしょう。私たちは良い国に住んでいます。

 さて、そこで再び東京都の新型コロナ感染です。常識的に考えれば緩やかに上がったり下がったりするはずの新規感染者数が、これほど激しく動くのはなぜなのでしょう? 基準は、どう変わったのでしょう?

(この稿、続く)

「横滑りする思考」~ダジャレ頭がサビついて困っている

 もともと思考が深まる性格ではなく、
 連想に囚われたり気移りしたりすることも多かった。
 しかし連想したことがいつまでも離れないというのは最近のことだ。
 いよいよ頭がサビついてきた。

というお話。

f:id:kite-cafe:20200713075929j:plain(「森の妖精」フォトACより)

【横滑りする思考】

 若いころからものを考えるとき、深く考えるよりは連想に足を取られることが多かったように思います。

 もちろん思春期には深く思い詰めることもありましたが、それは感情が沈潜することであって思考の深まりとはちょっと違いました。
 それは例えば数学の応用問題で、あと一歩、あと一分、集中力を途切らせず頑張れば解けるといったところで乗り越えられない根性のなさ、あるいは移り気、そんな感じのものです。

 ひとの話を聞くときも同じで、もちろん相手の話の進む先を漠然と予想したり楽しみにしたり内容を吟味したりしながら聞いているのですが、同時に頭の隅で関連する別の何かに気を取られたりしていることが少なくありません。その「気を取られたりしていること」に完全に心奪われるということはないので、「うわの空で聞いている」と非難されたりトンチンカンなやり取りになって恥をかいたりということもありませんでした。しかし余計なことを考えている分、会話が深まって行かないことはあったのかもしれません。

 この“ものごとを考えている最中に関連する何かに心奪われること”――を、私は「思考の横滑り」と呼んでいます。私自身に関して使うだけで一般化する気もなく、他人の思考についてとやかく言う気もありません。
 使い方は、
「ああ、ダメだ。思考が横滑りし始めた」
とか、
「横滑りでほとんど前に進まない」
といったふうです。

【誉めるなら笑え】

 日常生活では、「思考の横滑り」はしばしばダジャレを生み出します。言葉の本来の意味だけでものごとを考えていればいいのに、同音異義語に足を取られるのです。それを口にするとダジャレになります。
 それでも若いころはそこそこウケることもあって会話に弾みをつける上で便利だったのですが、本質は変わっていないのに歳を食っただけで「オヤジギャグ」と言われるようになり、家族からは迷惑がられ、家庭内では基本的に「いたずらに反応しないのが正しい反応」というようになっています。

 稀に娘のシーナだけが二コリともせずに、
「お父さん、今の、良かった」
と誉めてくれるのですが、“誉めるくらいなら笑え”というのが私の本音です。

 その「オヤジギャグ」に最近サビが出てきて困っているのです。本来の意味とダジャレの間で、行き来がスムースにできなくなっているのです。同音異義が混乱する――。

【オヤジギャグがサビつく】

 たとえばどんなことかというと、ほんとうに不謹慎で情けないのですが、今のこの時期、
「河川が増水する恐れがありますので・・・」
というニュースを聞くと「雑炊」が浮かんでしまうのです。荒れた川を雑炊の入ったお椀が流れていくといったところまではいきません。「ゾウスイ」は頭の中で8割くらいまで「増水」なのですが2割くらい「雑炊」という言葉が入り込んで、事態の深刻さにしっかり向かい合えないといった感じなのです。

「〇〇容疑者はいまのところ避妊しているとのことです」
・・・よほど特殊な犯罪でない限り、容疑者が「避妊」しているかどうかは問題になりません。したがってここは「否認している」が正しく、もちろんそんなことは分かっているのですが「避妊」がちらつく。

 さらに不謹慎な話で最近やたらとちらついているのが、新型コロナ関連の話です。
「昨日のPCR検査で新たに陽性になった人は○○名でした」
 このニュースで聞き間違えをする人など絶対にいないと思うのですが、私の頭の隅では「新たに妖精になった人」が飛び回っています。

 

【悪い予感があたりつつある】

 いつ頃からこうなのかというと、最も確かで最近の記憶は2年前の「信玄GO!(新元号)」です。

 このブログで「ポケモンGO!」みたいな位置情報ゲームを地域限定でつくって配信したらどうか、例えば上田市の街中をみんなで走り回って城を攻める「真田 de GO!」なんかはどうか、と書いたのが2016年7月。

kite-cafe.hatenablog.com
 それから3年たった2019年の3月に初めて「横滑りする思考」について書いていて、そこで「信玄 GO!」に触れたうえでわざわざ、
 最近、もしかしたら次第に「自分自身も困るレベル」に向かっているのではないかと、心配になる出来事がいくつか続くようになってきたのです
と書いているのです。

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 それから1年4か月。
 私の悪い予感は当たりつつあるのかもしれません。